ボールバートレーニングにより工作機械上で新製品より優れた精度を確保

半導体業界に製品を供給する企業では、これにより OEM サービスの技術者よりも工作機械のパフォーマンスを

よく理解できるようになっています。

更に、ボールバーデータは、TPM や新しい SPC と OEE プログラムに対応しています。


米国オハイオ州イートンに本拠を置く Silfex Inc の Wayne Ross 氏や Jacob Hebbeler 氏のように何台もの工作機械を使用する人にとって、ボールバーテストは決して目新しいものではありません。

この二人は十年以上にわたり、ボールバーを使用して工場の 50 台以上の機械の精度を維持、拡張してきました。

しかし、ボールバーの経験が豊富なユーザーでも、事業を変革するために、新しく学べることがあるようです。

TPM マネージャーの Ross 氏と機械オペレーターの Hebbeler 氏は、QC20-W ワイヤレスボールバーにアップグレードを行い、レニショーの 高度ボールバーコースを受講した後、取得したデータを活用して機械を評価し、工場出荷時以上の精度に「極度調整」して、工作機械の寿命を延ばすようにしています。

更に、機械の検証方法、メンテナンスのスケジュール方法、新しい機械の必要性を評価する方法を変革しました。

「何年にもわたってボールバーテストを実施してきましたが、高度ボールバーコースを受講するまで、その結果を完全に活用できていなかったようです」と Ross 氏は言います。

「現在は、ボールバーにより測定精度を確認し、メンテナンスのスケジュールを決定し、TPM や SPC を実施すると共に、機械寿命の予想も行うようになっています。これにより、かつては不可能だと思われた方法で運用上の決定や資本設備に関する決定を行えるようになりました。」

 

従来の装置を使用した斬新な処理

Silfex の加工アプリケーションは、軍隊の機械性能試験場のようなもので、機械診断が当たり前になっています。

その旋盤や VMC(主に Haas と Mazak)には、ダイヤモンド工具により半導体業界向けのシリコンやクオーツの研削と

研磨を行っており、研磨剤のような

ガラスの破片やダイヤモンドの粒子が形成されることで、

コンポーネントが数ヶ月間で磨耗します。290 名の従業員を

擁する同社は、Lam Research Corporation の一事業部

として拡大を続けており、Lam 社のプラズマエッチング室向けの電極とシリコン製治具をすべて製造するプレミアサプライヤーとして高い名声を確立しています。これらの消耗パーツは、コンピュータチップの製造においてエッチングプロセスに

使用され、その価値は 3 万ドルに達するものもあります。

工場は環境制御が行われ、クラス 10,000 から 100 までの複数のクリーンルームが設置されています。

「小さな汚れでも、多くのコンピュータチップが台無しになることがあります」と Ross 氏は強調します。
シリコン処理では、ワイヤーソー切断、ウォータジェット切断、フライス加工、穴あけ、研削、ラップ研磨加工を行った後、測定室の CMM と 画像測定機を使用して検査を行います。その後、パーツを構内のクリーンルームに送ってパッケージングを行います。

製造作業では、一回のセットアップで 5 個から 100 個のパーツを製造しており、必要な公差は通常 ±0.001 インチですが、中には ±0.0005 インチが要求されるものもあります。
シリコンを研削する場合には、加工環境が非常に苛酷なものになります。

「当社は従来の機械を使用して斬新な処理を行っており、高摩耗度の高いアプリケーションでも、ボールバー診断を使用して機械の能力を把握しています」と Ross 氏は説明します。

「6 ヶ月毎ボールバーでボールネジの磨耗を診断していますが、通常はその前に機械を試験するよう呼び出されます。高度ボールバートレーニングでは、機械の調整が可能かどうか、またはボールネジの交換が必要な時期かどうかを判断する方法を学びました。

これにより、完成パーツの品質から機械の能力を判断するのではなく、機械コンポーネントが磨耗するにつれ、機械停止時間のスケジュールを立てて、精度を維持できるようになりました。

当社では、装置にとって過酷な研削環境で、週 5 日間 3 シフトで長時間にわたってこれらの機械を運転しています。

機械環境が短時間で変化することを考慮しても、驚くほど高い機械精度を維持することができています。

当社の VMC の精度は、よりハイエンドの機械に匹敵するレベルを達成しています。

さらに、ハイエンドの機械は高速性に優れていますが、当社ではそれほど速く研削をしているわけではありません。そのため、当社に必要なのは高速な機械ではなく、単に正確な機械ということになります。」

 

高度ボールバートレーニングにより、機械の能力を向上

Ross 氏と Hebbeler 氏はレニショーの高度トレーニングを通じて、

ボールバーデータとその使用方法に関する理解を深めました。

米国イリノイ州ホフマン・エステーツのレニショーで開催されたこの実地トレーニングコースでは、参加者が学習ラボの各種工作機械を使用してボールバー解析のセットアップと実行を練習することができます。

 

「13 年間にわたってボールバーを使ってきたので、ボールバーには精通していると思っていました」と Hebbeler 氏は言います。

「コースが始まって 10 分程でこれまで知らなかった技を学びました。

 

数ある学習成果の中でも取り立ててあげられるのは、スケールミスマッチのトラブルシューティング方法ですが、

これにより、円弧補間を「極度調節」して、機械パーツの耐用年数を引き伸ばすことができます。

さらに、ガタからリニアガイドの状況を判断する方法についても学びました。」


「高度トレーニングクラスの後、データ解釈に集中して、制御できるものが他にあるかどうかを検討しました」

と Ross 氏は説明します。

 

グランドレベルから精度を確保


Silfex はボールバー診断を使用して、バックラッシュや反転スパイクの解析の必須条件となる直角度を判断しています。「当社もかつてはそうでしたが、多くの機械工場は、機械レベルに対するフロアの影響を見逃しています。当社は幸いなことに、コンクリートがしっかりしているので配置するすべての重量を支えることができ、据付時に機械レベルのチェックと調整を行っています。機械を水平に設置した後は、反転スパイク、バックラッシュ、スケールミスマッチを診断できますが、これもクラスを受講するまではその方法を知りませんでした。」
Ross 氏と Hebbeler 氏は、現在機械のレべリングを行うようになりましたが、彼らは技術者でも難しいような仕様を実現することができます。「整備員のうち、5 人に 1 人は当社の要件を満たすことができますが、その半数はできません」と Hebbeler 氏はこれについて説明しています。「当社のレべリングは非常に正確性が高くなっており、現在ではレベリングネジのピッチがより細かかったらいいのに、と感じるほどです。」

 

「Hebbeler さんはバックラッシュと反転スパイクの調整が非常にうまくなったので、ボールネジの寿命を延ばすことができるようになりました。これは整備のために技術者に来てもらうまでの間に、大きな強みになります。時には、2~3 の調整を行うだけで大きな時間を稼ぎ、その間に修理のために機械を停止するスケジュールを立てることもできます。」

 

Ross 氏と Hebbeler 氏は、トレーニングで新しく得た
知識を活用して、機械の精度限界を追求しています。「当社の直角度に対する目標値は 0.000050 インチ/インチでしたが、0.000025 インチ/インチを試すことにしました」と Ross 氏は説明します。「Hebbeler さんにそれを伝えたら、ためらっていたので、過去 3 回にわたって実際に達成済みであることを示すデータを見せました。」
Ross 氏と Hebbeler 氏はボールバーの成功を基盤に、機械診断を拡大しています。「ボールバーテストは機械下部のリニアガイド、ボールネジ、トラスベアリングといった基盤に関するデータを示してくれます。ここは、機械公差が確立される場所で、当社の計測精度もここで確認できます」と Ross 氏は言います。
「更に、振動解析も使い始めましたが、これは完成状態に影響する機械の上部に関するデータを示してくれます。

そのため、これらの 2 つを組み合わせることで、サイズと完成状態に影響を与えるすべての要因を解析することになります。更に、ボールバーによる空間補正試験もはじめたいと考えています。

現在、VMC で X と Y を試験し、旋盤で X と Z を試験しており、これまで何台かの機械で完全な Y-Z 試験を実施しましたが、空間試験では、X-Z も達成することが予想され、ボールバーで可能な 220 度のスイープ検査で求めるデータが得られるものと考えています。」


ケーブルがないため、心配も無用


Hebbeler 氏はワイヤレスボールバーにアップグレードしたことで、データ収集が簡素化され、安全になったとしています。

「ケーブル式のボールバーでは、長時間にわたって試験する機械を監視する必要がありました。」

「機械の後ろ側からケーブルを通さなければならず、数分間その場を離れた後に戻って見ると、ケーブルがねじれていたものでした。また、試験中にケーブルが少し引っ張られることで、結果に影響を及ぼすのではないかという心配もありました。しかし、ワイヤレス操作になってからは、このような問題もなくなり、セットアップした後は、試験が完了するまでその場を離れることができます。更に安全性も向上したため、ドアを開いた状態での試験をすることもなくなりました。」

 

ボールバーデータにより新しいプログラムの可能性を開く

Silfex は、現在では、ボールバーデータを使用して各種プロセスに関するしきい値を設定して、工程能力を判断するようになりました。

「現在は、診断により機械に起こっていると思われる状況の裏付けを取ることができます」と Ross 氏は言います。

「現在、このデータを TPM プログラムや、SPC の実装と将来の OEE(機械全体の有効性)のモニタリングに活用している段階です。完全 SPC ができれば、全品検査を廃止することができます。更に、機械の能力、メンテナンス費用、一貫した品質に基づいて、機器の耐用年数を判断しているところです。」
Silfex の専門技術には、工作機械の技術者も感心しています。「中には『この機械は新品同様だ』と言う技術者もいるため、

それ以上でなければダメだと伝えています」と Hebbeler 氏は

説明しています。

「すると彼らは『何をしたいのか教えてくれ』というので、機械
をデモすると、今度はどうやってしたのかを教えてくれというのです。高度トレーニングにより、技術者レベルか場合によってはそれ以上の知識が得られたため、現在では考えていることを裏付けるデータを取得できるようになりました。」

ボールバー解析により生成されるデータは、同社の役員の間でも話題になっています。

「役員は、機械の検証を行う度にボールバーレポートを見ることを望んでいます」と Hebbeler 氏は説明しています。

「当社の規定手順の一環で、ここと本部でボールバーレポートを機械の文書と共にファイリングしています。
製造基準のレベルが向上していますが、ボールバー解析により更なる高レベルを目指すことができます。」
Ross 氏は最後に次のように述べています。「世界はデータを中心に回っていますが、ボールバー解析は、優れた事業上の決定を行う上で非常に役立っています。」